今日から協会役員によるリレーエッセーを連載します!
立春をスタートに二十四節気に合わせて掲載予定です。
とちぎの自然をフィールドにガイドをしているメンバーや専門分野で研究をしているメンバーなど、どんな話題が飛び出すかはお楽しみに!
124年ぶりの春の始まり

今日は立春、二十四節気では春の始まりの日とされ1年の始まりです。
そして今年は明治30年以来124年ぶりに1日早い2月3日の立春となりました。
「とちぎウェルネスツーリズム協会」(TWTA)も先月15日に総会を開催し新しい年が始まりました。
TWTAは「とちぎの自然や風土、文化の魅力を生かした旅やウェルネス体験、キャンプや交流事業等を通じて、会員の健康で生き生きした豊かなライフスタイルの実現」を目的として設立しましたが、今年度は以下の項目を重点に事業を企画していきます。楽しみにしていてくださいね。
- 会員がリピートしたくなるとちぎのサードプレイスの提案
- 仲間を増やす人材育成の充実と思いを共有するプレイヤーの拡大
- デイプログラムと宿泊プランの組合せによるウェルネス効果のアップ
社会にはストレスのタネがあふれている
さて、アメリカではトランプ政権が始動し、今までの価値観やルールが大きく転換しています。日本の社会でもドラマ「不適切にもほどがある」で描かれたように昭和から令和へとその価値観の変化には改めて驚かされます。
「巨人の星」や「アタックNo.1」のスポ根アニメで育った昭和世代には、自分の信念を貫き、真面目に汗をかけば必ず報われるという黄金律が心に刻まれているのですが、今の社会ではそんなに単純にコトは進みません。

AIをはじめとするテクノロジーの進歩は日々加速し、寄って立つ価値観も揺らいでいる中で、自分の存在意義に疑問を感じたり、考えていることが正しいのか疑心暗鬼となり不安や無力感に陥ったり、なんだかだるいなぁと感じつつも栄養剤やサプリを飲んでやり過ごしている方のお話しもよく耳にするところです。
日常的にどこにでもありそうなこんなストレスが、実は私たちの心やカラダをジワジワと蝕んでいる可能性が高いのです。こんな症状に心当たりはないですか?
- 首や肩周りが重たい、凝っている
- 下痢や便秘、胸やけなど胃腸がすっきりしない、食欲がない
- 夜なかなか眠れない、寝ても眠りが浅い感じがする
- 動悸や息切れ、めまいが増えた
- ニキビや湿疹、痒みなどの肌トラブルや風邪をひきやすくなった
がん細胞は毎日生まれている
厚生労働省の2023年度人口動態統計によれば、日本人の死亡要因のトップは、悪性新生物(がん)で24.3%、4人に1人ががんで命を失っているのですが、がんはある日突然生まれてくるものではありません。私たちのカラダの中で日々再生を繰り返す細胞の内、遺伝子異常などにより毎日3,000〜5,000個ものがん細胞が生まれているのです。それを私たちのカラダが備えている免疫システムが見つけ出し、攻撃して取り除いているのです。
このシステムで特に大切な役割を担っているのがNK(ナチュラルキラー)細胞といわれるリンパ球で、直接がん細胞を攻撃して除去するとともに、サイトカインという情報伝達物質を出し、ともに戦うT細胞やマクロファージを活性化させます。私たちが知らないカラダの中でこうした壮絶な戦いが日々繰り広げられているのです。

そのバランスを崩す要因に寝不足や疲労、ストレスなどによる自律神経の乱れがあり、こうした状態が続くと免疫機能が弱まりがん細胞の増殖を許してしまうことになります。しかし、このNK細胞の機能を高める方法が平成19年に日本医科大学の研究により発見されました。
それは「森の中で過ごす」こと。3日間の森林浴によりNK細胞が放出する抗がんタンパク質が増加し抗がん能力が高まったという実験データが認められ、その効果は1ヶ月後も持続することがわかりました。樹木が放つフィトンチッドや森林浴によるリラックス効果がこのNK細胞の活性化に寄与することがわかったのです。
森の効果は想像以上
森の効果はNK細胞の活性など免疫系の機能向上にとどまらず、血圧や呼吸数などを司る自律神経やホルモン分泌を司る内分泌系のバランスを整えることもわかっています。森林浴によりコルチゾールなどのストレスホルモンが減少し、またリラックス効果により自律神経の副交感神経が活性化し、血圧や心拍数が下がり、血流もよくなることがデータでも実証されているのです。

教科書によれば人類が誕生したのは500万年前のアフリカといわれていますが、人類が今のような街の生活にシフトしたのは18世紀後半の産業革命の頃からでしょう。人類の歴史上それ以前の99.9%は森の中の生活が主体であり、森のリズムにあわせてヒトの心やカラダがうまく機能するようにシステムが作られDNAに刻み込まれてきたのです。200年や300年の短い期間ではそうはたやすく適応することはできないのです。
私たちのDNAには、せせらぎの音や葉っぱの揺らぎに心地よさや安心感を覚えて癒される特質や、太古の昔から繰り返される月や太陽の動きに応じて必要なホルモンを分泌して、カラダの機能を調整するような仕組みが刷り込まれているのです。



ウェルネスキャンプの効果は絶大
私的な体験談で少しはばかられるところですが、半年ほど前にどうしても作らなくてはならない資料を抱えてどんなデザインにしようか? どんな内容ならわかりやすいか?など 1週間もあれこれ考えながらなかなか手が付かずにいた作業を抱えていたことがありました。そんな折、気持ちを切り替えようと思い那須高原のソロキャンプ場に出掛けて一人で一晩森の中で焚火をしながら過ごしてみたのです。
朝を迎え温泉に入って帰宅したのはお昼過ぎでしたが、午後から資料を作り始めてなんとその日の夕方には資料を仕上げることができてしまいました。すべてが森の効果だというつもりはありませんが、モヤモヤしていた頭がすっきりとしてヤル気も満ちて仕事を片付けられた時は、やはりその不思議な効果に感謝をせずにはいられませんでした。



今までキャンプといえば、青少年教育や社員教育などのある目的を持った組織的なキャンプか、家族でバーベキューや魚釣りをするなどのレジャーキャンプがメインでした。また最近は漫画「ゆるキャン」や芸能人ユーチューバーなどの影響もありソロキャンプを楽しまれる方も増えてきています。
そんな中、コロナ禍を経てTWTAでは、森のリフレッシュ効果や健康効果を最大限生かすとともに、今の自分の心やカラダの状態に目を向け、自らの気づきからいい方向に自分の状態を持っていくことができるようなキャンプ体験を提供したいと取り組んでいます。名付けて「ウェルネスキャンプ」。
定義を「自然環境のもとで、心とカラダを整え、元気になるキャンプ」としました。森の中で五感を研ぎ澄まし、深呼吸をし、ゆったりとした時間の中でハーブや地の食材を使って自分のご飯を作り、自分のスペースを森の中に作る。森の力を借りて自分に向き合い、心とカラダをリフレッシュして、イキイキとした日々の暮らしをデザインすることができるキャンプをデザインしています。
ウェルネスキャンプをやってみよう
TWTAでは、ウェルネスキャンプの体験会を実施しています。
昨年は「ヒュッゲ・キャンプ」~焚き火料理と癒しの時間~と銘打って、フィンランド式ソーセージの「コッコ・マッカラ」や鮭スープの「ロヒ・ケイット」、デンマーク式棒巻パンの「スノブロー」などの北欧料理を楽しみながら思い思いに焚火を楽しみ、翌日は朝ヨガで整えるプログラムで開催しました。ちなみに「ヒュッゲ」とは、デンマーク語で「居心地がいい空間」や「楽しい時間」のこと。今年も秋の実施を企画していますのでぜひチェックしてくださいね。



また「ウェルネスキャンプリーダー」の養成講習会も2022年から毎年開催しています。今年は、Zoomによる事前講習と組み合わせて7月5,6日に実技講習会を開催します。会場は先ほどお話しした那須高原のソロキャンプ場です。ぜひ、その効果を実体験してみませんか?
今年もとちぎの素敵な自然環境を生かして、素晴らしい体験や多くの出会いができるよう力を注いでいきます。どうぞよろしくお願いいたします。
TWTA2025年度事業計画
総会で決定した事業計画案は以下に掲載します。

次回エッセイは2月18日の「雨水」、まさくんchannelの小野真寿さんの登場です!